長野取材その3 
編集室いとぐち 山口美緒さん

東町を散策したあと、私の人生初取材のお相手となる山口美緒さんを訪ね、古い蔵群を改修したシェアオフィスのカネマツへ。一階入り口はパンのおいしいカフェだが、残念ながらこの日はお休みだった。建物の中を見つつ、働いている方々にごあいさつしながら、最奥の編集室いとぐちへ。いよいよ山口さんとご対面。あいさつもそこそこに、なぜかコーヒー豆を挽く私。コーヒーが入り、いよいよ私の人生初取材がスタートした。

山口さんは小諸市生まれ。中学、高校と水泳部に所属。筑波大学で都市計画・地域景観計画を学び、長野市にある出版社に入社した。しかし出版社の仕事は、どこもそうらしいが、ブラックどころか漆黒レベルの過酷さで、朝の9時から深夜3時までの勤務がエンドレスという毎日。

そんななかで元気を保つのは非常に難しいものがあったという。時にはニンニク注射をうって持ちこたえていたが、心身ともに疲れ果ててしまった山口さんは出版社を辞め、2009年に「編集室いとぐち」を立ち上げた。

独立してからは自分のペースで働き、『信州蕎麦ごのみ』『日本酒で愉しむ信州の二十四節気』『長野市民会館50年の記憶』といった書籍の編集・執筆などを手がけてきた。

山口さんが長野県で働き続ける理由をたずねた。都会に生まれた人には、ビルや町工場が原風景となるが、山口さんの場合、それが長野県の山や川、あるいはひとが自然と暮らすなかで生まれる風景だった。何を美しいと思うかは、人それぞれちがう。山口さんは、自分にとって美しいものを「紙」という手段で守り、伝え、残したいと思っているのだ。古くなったら壊して、新しいものを作り出すのではなく、今あるものを大切にしていく。それはカネマツを再生した活動にもつながっている。

私は驚いたことがひとつある。それは本を作る際、「紙」から自分たちで決めるということである。どうやら、どの紙にするかで写真の写りや本の質感が大きく変わってくるらしいのだ。山口さんが言うに、発色が良く、質感が良く、いかに予算内におさえるか。この希望に沿う紙の模索は続くが、この模索が楽しいらしい。

取材のあと、門前で一番おいしいのではないかというお蕎麦屋さんにお昼ごはんを食べに行った。その帰り、山口さんが私に「いいデザイナーになりたいなら、おいしいものはたくさん食べておいた方がいい」と言った。つまり、より良いものづくりをしたければ、より良いものを知っておくということ。

私はデザインと食が繋がるとは思ってもいなかったので、新しい発見になったとともに、食べることが好きだった自分にとってうれしい言葉でもあった。今後は、今まで以上においしいものを食べていこうと思った。

(取材・文・写真/長野プロデュース科1年 丸山亜緒衣)

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