長野取材その4 株式会社シーンデザイン
建築設計事務所 宮本圭さん 

「知ってる? 今年は桜餅300周年なんだよ」

唐突に始まった宮本圭さんの桜餅話。取材とはまったく関係ない話をしだす宮本さんに、私は興味津々だった。桜餅が誕生して今年で300年が経ったらしい。そして宮本さんはボンクラ主催の花見を盛り上げるため、「雅担当」として日本らしい文化を発掘発信しているらしい。

宮本さんは1970年、長野市生まれ。工学院大学工学研究科建築学を修了後、当時建築家を目指す人たちのなかでカッコイイとされていたアトリエ系と呼ばれる建築設計事務所に就職した。しかし、憧れの職場での仕事は雑務ばかり。やっともらえたと思った仕事は、一度もやったことがない設備設計だった。未経験なので用語すらわからないうえ、先輩は何も教えてくれない。

「辞めたい」。その気持ちを、とある人に打ち明けたところ「男が始めたことは、10年やれ」と言われた。しかし、その言葉で「10年経ったら辞めてもいいんだ!」と気持ちが楽になるとともに、「事務所のなかで誰よりも設備に精通してやろう」と前向きになれたという。それから3年半くらい経ち、宮本さんは念願の意匠設計をできることになった。

そして、決意していたとおり、宮本さんは10年後、36歳で仕事を辞め、独立してシーンデザイン一級建築士事務所を設立した。時間だけはたくさんあるなか、今の仲間たちと出会い、さまざまなプロジェクトに多数携わってきた。今ではボンクラやCAMP不動産などの活動をとおして長野の活性化に大きく関わり、多忙な日々を過ごす。

宮本さんは今後の門前について、「どうなるかはわからないけど、門前は確実に面白くなっていく」とおっしゃっていた。門前で数々のリノベーションに携わっている宮本さんがそう言うのだから、門前はさらに進化していくに違いないだろう。

取材の合間に宮本さんと、私の目指すものについてお話した。私は県内でデザイナーとして活躍したいと思っているが、まだ明確なとこまでは決まってない。そんな私に宮本さんは「地元の安曇野でデザイナーを目指すのはいいと思うよ。だって、ブルーオーシャンじゃん」とおっしゃった。

「そうか! ブルーオーシャンか!」

私は宮本さんが発した何気ないひと言で背中を押され、以前より、自分が何を目指していきたいのかが明確になった。

「ブルーオーシャン」

それは、たぶん一生私の中で忘れられないほど、心に響く言葉だった。

 

(取材・文・写真/長野プロデュース科1年 丸山亜緒衣)

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